どうして -幻水3梨栗SSS | 2009.12.06 Sunday
幻水3 ナッシュ×クリス小話。
一年以上ぶり。超久しぶり。。。でもやっぱり一番好きなお二人です。
とりあえずひたすらベタ甘を目指してみました。
「どうして」
――ねえ、どうして俺だったの?
にやけた笑みを浮かべて楽しそうな男の様子に、いつものように溜息が漏れる。
なんでもないとき。ふとした瞬間。話題と話題のふいの隙。本当に何気なく、だけど確実に計算されたタイミングで投げ込まれたそれに、クリスは眉を顰めた。
「……からかわれるのは嫌いだ、と前にも言ったはずだが?」
「酷いな。俺はいつだって至極真面目だよ?」
彼のこの手の言葉には実はあまり意味がないことに気がついたのはもうだいぶ前のことだ。
初めのうちはいちいち真面目にとりあって、その度に噛み付いて、交わされて、そしていつの間にか絆される。そんなことを彼はとても楽しげに、私は戸惑いながら随分と続けていた。
もちろん照れもあった。……というかほとんどが照れだった。そんなこと正面きって訊く事ができるなんてこいつはなんて神経の図太い奴なんだ、と思う一方で、すぐに答が浮かばない自分に戸惑った。
――どうしてこの男なのだろう。
年齢差は十五。職業は隣国の諜報員。出自はその隣国の貴族の家で、家族は妹がひとりいるらしい。基本的には人当たりのいいお調子者だが、……時折見せる酷く冷めた目が気にかかる。
おまけに出会った当初は「妻帯者」だと偽ってみたり、「偽名」を使っていたりと今振り返ってみても怪しむことには事欠かない。
顔立ちは、……たぶん整っている方だと思う。長身で身のこなしや何気ない所作が綺麗で、時折目を奪われることすらある。特に長い指先が煙草をケースから引き抜く仕草が好き。
だがそれだってきっと「彼」のものでなければ同じ感情は抱かない。
「……別に特別な理由があるわけじゃない」
というか、実際自分でもよくわからないんだ、と小さく付け加える。それからちょっと首を傾げて訊いた。
「だからそういうことを訊かれても困るんだ。……それとも何か理由がないと信じられない?」
男は困ったように微笑むと、いいや、と首を横に振った。
とりあえずわかってもらえたことにほっと胸をなでおろす。すると向かいに座っていた男が少し上体を乗り出し、こちらに向けて手を伸ばした。ほとんど反射的に身を引くが、一歩遅い。
額に触れた指先の感触に肩を竦めて目を上げると、翡翠の瞳がいつものように笑っていた。
「眉間にシワ寄ってるよ」
「お前のせいだ!」
ふいに迫られると逃げ腰になるのは前からの癖だが、こんな時はなんだか自意識過剰なようで決まりが悪い。首を巡らせてそっぽを向くと、やはり男がくつくつと笑うのが気配でわかる。
「嬉しいねえ。そんなに深刻な顔して悩んでくれるんだ」
楽しくて仕方ない、といったその声にますます居心地が悪くなり、クリスは溜息をついた。
「……お前の、そうやって何でも茶化すところは嫌いだ」
苦い呟きにもなんのその。再び伸ばした指先で頬に触れると、男は言った。
「ごめん。でも大丈夫。ちゃんとわかってるよ」
――そんなこと、わざわざ言われなくてもわかってる。
いつもそうだ。わざと意地をはらせるくせに、自分から折れて甘やかす。それなのに時々こうやって酷く真摯な目をするから、――とても困る。
「俺は君のその真面目で真っ直ぐなところ、大好き」
耳のごく近くで囁かれたわざとらしいまでの甘い声も、台詞も。慣れているはずなのに、何故か身震いがした。
一年以上ぶり。超久しぶり。。。でもやっぱり一番好きなお二人です。
とりあえずひたすらベタ甘を目指してみました。
「どうして」
――ねえ、どうして俺だったの?
にやけた笑みを浮かべて楽しそうな男の様子に、いつものように溜息が漏れる。
なんでもないとき。ふとした瞬間。話題と話題のふいの隙。本当に何気なく、だけど確実に計算されたタイミングで投げ込まれたそれに、クリスは眉を顰めた。
「……からかわれるのは嫌いだ、と前にも言ったはずだが?」
「酷いな。俺はいつだって至極真面目だよ?」
彼のこの手の言葉には実はあまり意味がないことに気がついたのはもうだいぶ前のことだ。
初めのうちはいちいち真面目にとりあって、その度に噛み付いて、交わされて、そしていつの間にか絆される。そんなことを彼はとても楽しげに、私は戸惑いながら随分と続けていた。
もちろん照れもあった。……というかほとんどが照れだった。そんなこと正面きって訊く事ができるなんてこいつはなんて神経の図太い奴なんだ、と思う一方で、すぐに答が浮かばない自分に戸惑った。
――どうしてこの男なのだろう。
年齢差は十五。職業は隣国の諜報員。出自はその隣国の貴族の家で、家族は妹がひとりいるらしい。基本的には人当たりのいいお調子者だが、……時折見せる酷く冷めた目が気にかかる。
おまけに出会った当初は「妻帯者」だと偽ってみたり、「偽名」を使っていたりと今振り返ってみても怪しむことには事欠かない。
顔立ちは、……たぶん整っている方だと思う。長身で身のこなしや何気ない所作が綺麗で、時折目を奪われることすらある。特に長い指先が煙草をケースから引き抜く仕草が好き。
だがそれだってきっと「彼」のものでなければ同じ感情は抱かない。
「……別に特別な理由があるわけじゃない」
というか、実際自分でもよくわからないんだ、と小さく付け加える。それからちょっと首を傾げて訊いた。
「だからそういうことを訊かれても困るんだ。……それとも何か理由がないと信じられない?」
男は困ったように微笑むと、いいや、と首を横に振った。
とりあえずわかってもらえたことにほっと胸をなでおろす。すると向かいに座っていた男が少し上体を乗り出し、こちらに向けて手を伸ばした。ほとんど反射的に身を引くが、一歩遅い。
額に触れた指先の感触に肩を竦めて目を上げると、翡翠の瞳がいつものように笑っていた。
「眉間にシワ寄ってるよ」
「お前のせいだ!」
ふいに迫られると逃げ腰になるのは前からの癖だが、こんな時はなんだか自意識過剰なようで決まりが悪い。首を巡らせてそっぽを向くと、やはり男がくつくつと笑うのが気配でわかる。
「嬉しいねえ。そんなに深刻な顔して悩んでくれるんだ」
楽しくて仕方ない、といったその声にますます居心地が悪くなり、クリスは溜息をついた。
「……お前の、そうやって何でも茶化すところは嫌いだ」
苦い呟きにもなんのその。再び伸ばした指先で頬に触れると、男は言った。
「ごめん。でも大丈夫。ちゃんとわかってるよ」
――そんなこと、わざわざ言われなくてもわかってる。
いつもそうだ。わざと意地をはらせるくせに、自分から折れて甘やかす。それなのに時々こうやって酷く真摯な目をするから、――とても困る。
「俺は君のその真面目で真っ直ぐなところ、大好き」
耳のごく近くで囁かれたわざとらしいまでの甘い声も、台詞も。慣れているはずなのに、何故か身震いがした。




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